本日珍しいお客様がいらっしゃった。かのMD研究会を率いるマスター郡司さん。あたしをトリガー役にしてしまったための表敬訪問か?。じつはなぜsRGBにあたしがこだわるのか、その理由をきちんと知りたい、ってことだった。
トリガーになってしまった私の仕事としてsRGB擁護論を展開してしまったためらしいが、熱心な事です。
“switch on CMS”つまり、ディスプレイをキャリブレーションし、環境を整え、Photoshop CSで言えば「日本-JapanColor」を選択する。その上で印刷入稿のばあい AdobeRGBをスタンダードに、という部分では意見の一致を見た(と思う)。使える色域は広いほうがよかんべ、という意見にには疑問を挟む余地が無い。
sRGBで出来る事は AdobeRGBでも可能。ただ、いまだ AdobeRGBを見る事の出来るディスプレイが通常買える値段では存在していない、というのが私にとっては悩みの種。(少しは理解してもらえたかも。しかしうんとはうなずいてくれなかった)何も見ずにデータを渡してしまうのはどうにも心もとない。(プリンタで出してみるって言うてはあるんだろうけど、それまでわかんない、って言うのもなんだかなあ。でも今実際はプリンタ出力と数値の確認でやり過ごしている)
郡司さんの AdobeRGBをスタンダードに、という発言も当然 sRGBデータが印刷業界に流入してくる事をふまえた上でのことだ、とお聞きしてすっかり安心。丸め込まれちょうな気もするが、それはそれで構わない。スタンダード作りにはもちろん協力したい。
ただ、写真の本質は彩度だけではない。ここが印刷と違うところだろう。(印刷の色づくりってものすごい物がある。あたしたちには理解できないような、まさかそんな、って色の使い方をすることもあるのだ。)今更コロタイプの昔話を持ち出す気は無いが、まず、きちんとした諧調ありきなのだと今でも思っている。もちろん AdobeRGBでもそれは可能。 sRGBでも可能なのだ。記録に徹する写真であれば、ひたすら広いカラースペースが必要になるだろうが、違う写真もあるという事。通常の商業印刷に求められるのは「諧調こそが写真」ではなく、「印刷素材としての適性」なのだろう。仕事をする場所が違うのだから。
Monthly Archives: 2月 2004
この一週間
ここのところ新潟づいている。今日は明日の結婚式の撮影のため、新潟入りの新幹線の中。この一週間も慌ただしかったので、まとめて日記を書こうと思っている。日記ってまとめて書いたら意味ないじゃん、とは思うのだが。
不思議な事
このところ新幹線に乗る事が多いのだが、なぜか、ウナギ弁当が東京駅で売っていない。アナゴはあるんだけれども、これはいったいなぜだろう? 地場の食品を大切にしようというのか、浜松のウナギ弁当協同組合の陰謀で東京でウナギを売ってはいかんというお達しがでたのか? 新幹線の中でウナギ弁当を食べるのが楽しみのあたしとしては何としても原因を追及したいところだ。どなたかご存知でしたら教えてください。
嬉しかった事
先日お客様のところに納品に言った際、そのすぐ隣の床屋で“おかく”そっくりの子が日なたぼっこをしていた事。つい携帯電話を取り出して、ガラスにへばりついて撮影してしまった。実はこの子の存在は“おかく”が生きていた頃から知ってはいたのだが、ここしばらく会う機会がなかったのだ。時間さえあれば、散髪してもらい、ゆっくりと遊んでいきたいところだったが、好事魔多し、で急いで帰り、別の画像処理をしなくてはいけないという緊急電話があったため、それは断念しなくてはならなかった。デモ初めて写真が撮れたので…
土曜日に神戸デジタル同好会の横島さんがご夫婦で遊びにこられた事。そんなにはゆっくりできなかったけれども、自宅近くのそば屋(尾張屋という、おかみさんが美人なことであたしたち夫婦の間では有名な店)でご一緒に夕食。それ自体も楽しい事だったが、彼はその前日に京都の笠井さんとお会いしたらしく、私がフリーBBSに書き込んだ件に(s/AdobeRGB論争。ほんとは論争でもなんでもないのだけれども)好意的な発言をいただいた事。笠井さんご自身の立場はともかく、必要な事をまじめにコメントしている、と評価していただいたのだ。(もっともまた聞きなので細かいニュアンスまではわからないけど)
20年近く前に岡谷のデパートを撮影に行っていた頃にいつも同行していたデザイナーさんから電話があり、(3年ぶりくらいの再会)お仕事をいただけたこと。少しタイトなスケジュールだったので、金曜日の夕方からという撮影になってしまったが、久しぶりに会う気心が知れた間で仕事をするのは楽しい。
憂うつな事。
奥歯(親知らず)の痛みは収まったが、また疲労が重なったりすると、いつでも再発する可能性があるとの事。大学病院まで行って切開、抜歯をしなくてはいけないという。実はそんな歯が2本もあるのだ。とにかく、一個は3月の初めに抜く事になった。
会社から破棄機処分になり、自宅にもちかえった“久田”用のiBookがとくちょくハードディスクからカラン、カラン、という音が聞こえるようになった。もっともその傾向がでてきたためにリタイヤさせたのだが、毎日1~2回はそんな症状になるようになってしまったのだ。“久田”はこれを家事、チケット取り、iTunesの取り込みと、彼女にとって家庭での大事な仕事に使用しているのでこれは危険だ。(もっとも突然ディスプレイがブラックアウトするという症状もあったのだが、これは非常時にはテレビを外部ディスプレイにする事で折り合いをつけた。)ハードディスク交換だけで治るのか知らん?やってみてだめだった時が一番心配だ。(このマシンはハードディスクのトラブルが多く、確かに回は交換しているので)実はこうして第一線では使えないけれどもまだ動く、というマシンはどんどん自宅に溜まる。電源部がイカレたPowerBookG3/233 やら 満身創痍のPM7600 など、秋葉原のジャンクや状態。
新しい機械。
6年以上うちのフラッグシッププリンタとして活躍してきたPictrography4000がついに引退する事になった。リース切れやら熱源像部にムラが出始めた事などが原因。ただ置いておいても場所ふさぎなのでリース会社に引き取ってもらい、そこに新たに PX 6000s が投入され、つい3日まえに納品された。OS X 環境だと、全てのマシンから直接アクセスしてプリントアウトできる。(特にサーバにつなぐ必要もない)もちろん直結しているマシンからもプリントアウト可能で、これは便利。スピードも顔料系にしてはそこそこ早く、大満足。見本プリントを作成する場合に、ちょうどよい用紙、設定がないのが少々残念だが、これはゆっくりと考えよう。(ピクトリコのプルーフペーパーが使用できるといいのだが、マット系の黒インクがどうやらはじかれてしまうようだ。)とにかくA2サイズを出力できて、A4ペーパーをトレイから給紙できる点は大いに評価したい。値段はPictrography4000の1/26という安さ。ランニングコストも1/8くらい。PM4000PX に比較しても、早く、動作が安定しており、インクタンクを取り換える手間がないのも魅力だ。ただグレイインキがないためか、シャドウ側の諧調がいきなり“しまる”のは困り者。といって7色印刷にすると、今度は黒インクが環境光によってふらついてしまう。そのうち時間が出来たら、マットインク+グレイインク+5色のインクでのテストをしてみたい。
AdobeRGB、sRGB論争
どさ回りのように新潟、東京、東京、仙台、東京とセミナーを続けてきた(セミナーこそしなかったが、途中に韓国行きも重なり)が、やっとここに来て一段落した。歯の痛みも治まり(でもまだ抜けてはいない。大学病院まで出向いて抜歯しなくてはいけないそうだ)とおもったら今度はハイデルさんのセミナーでのあたしの発言がトリガーとなって sRGB、AdobeRGB論争に火がついてしまったようだ。(この一件については前回の日記に書いておいたので読みたい方は、2/6の分を参照してくださいませ。)
問題はどちらのカラースペースを使うべきか、という本道とは少し違うところで論争されている。本道は“この際皆さんカラーマネージメントに乗っ取ってお仕事をしましょう”という事なのだが、どうもカラースペースも一つに決めないと迷うという意見が多数を占めているようだ。(これって結局「あたしはカラマネなんて理解もしたくないから具体的にどのスイッチを入れればいいのかその方法だけを教えて」、って言っているような物だと思う)
あたしの期待した形ではない論争なのだが、この際徹底的にやり合ってウミを出し切ってしまったほうがいいのかもしれない。さまざまな立場から、これが良い、という意見を聞けたら、そしてその根底にカラーマネージメントにのっとって、という但し書きが付いてきてくれたら良いなと思うのです。どういうところに落ち着くやら?
入稿形式はCMYKかRGBか、ってところでRGBに落ち着いたと思ったら、今度はRGBでもそれはsRGBか AdobeRGBか、ってところに焦点が移っちゃった。ある意味順当な順番ではあるけれども。個人的には印刷原稿としての入稿形式であれば、 AdobeRGBだろうと思う。ただし sRGBの入稿はどんなところから来るやもしれず、それにそっぽを向かず、正しく受け取ろう、というところで落ち着いてくれる事を願うばかり。
自分なりに整理してみた物を電塾のFree BBSに書き込みましたので、ご興味のある方はそちらも見てくださいませ。前回の日記に書いた事と重複している部分はありますけど。
ハイデルフォーラム
郡司さんとのカップリングで、ハイデルフォーラムに参加させていただいた。製版、印刷業界のかたがたにカメラマンは何を思って、どのような感覚でデジタルデータを作っているのか、カメラマンに何が出来て、何は出来ないのか(綺麗なRGBは作れても、CMYKデータを作成する準備、つまりドットゲインも印圧も、トーンリプロダクションやカラーリプロダクションの経験も通常はないのにそれをやらせないでくれ、ってこと)をお話するためにいったのだが、またもやあたしがsRGB論争をふっかけてしまったので、全く、いつになったらわかるんだ、という感じで早速まな板にあげられてしまった。
彼の言うこともよくわかるし、事実、私も通常は AdobeRGBを使用している。しかし、sRGBは、やはり世の中に氾濫しており、それを否定は出来ないと思ってしまう。うまく使えばなかなか使い勝手のある色域なのだ。しかもディスプレイで確認できるという大きなメリット(もちろんもともとディスプレイの色域を参考に作られたカラースペースだもの)は捨て難い。将来的にディスプレイの AdobeRGB化とともに、印刷の世界は AdobeRGBに収束していくとしても、当面はsRGBは残るだろう。
“高級印刷”はともかく、グッドインナフの印刷はsRGBで問題ない時代はしばらく続くとそれでもあたしは思うのだ。色域がコンシューマーでも構わんじゃないか。それだって十分な色再現は出来る。特に写真という物は諧調さえ、しっかりしており、色相がきちんと分離していれば、彩度は低めでも十分に立派な写真として成立するのだ。ちなみにあたしは高彩度をさほど必要としない絵柄を扱う事が多いという事も言えるだろうけど。
カメラマンにとって何が大事かって、それは与えられたカラースペース内できっちと諧調を再現し、色相を分離、再現する事で彩度は飛ばないように気をつける事なのだもの。私たちにとっては、sRGBも AdobeRGBも、どちらも使い勝手のある、パブリックで重要な色空間なのだ。色彩は常に相対的な対比の上になり立っているのだから、使用する色空間の中でバランスをとれればそれで素材としての役目を十分に果たすという事をいいたいわけで、なにもsRGBに固執しようというわけではない。(前にも書いたようにあたしもスタジオ内の仕事はほとんど AdobeRGBで行っているが、印刷会社の営業さんにどの色空間にしますか?とお訊ねし、口ごもった時はまよわずsRGBに変換して納品している)これはそう簡単に切り捨てられるべき物ではないという事なのだ。sRGBで入港されてきて、それでも AdobeRGBを使用したければプロファイル変換してシアングリーンとオレンジの彩度を引っぱり上げればいい。(もとデータが整っていればなんの問題もなく可能だ)それは印刷会社が選択してやればいいだけの事。標準化はカラースペースを固定する事ではなく、カラーマネージメントを流通させる事だとあたしは確信している。こんな事を書くとまた怒られるかしら?
だからといって私と郡司さんは仲が悪いわけではけっしてないし、嫌いなわけではない。(もちろん私は郡司さんを尊敬しているし、彼もそれなりにカメラマンに対して専門職にたいする敬意をきちんと払ってくれる)カラマネのもとでRGBワークフローを確率させよう、標準化を何とか制定しようという運動は全く同じ。ただ、彼は一つのカラースペースであるべきといい、あたしはどちらもありと唱えている。ま、そこが彼にとっては邪魔なんだろうけれどもね。
昨日から奥歯が痛み、やっとの思いで歯医者に行くと、静まるまでは手がつけられないという。とりあえず消炎剤と鎮痛剤。口内の消毒。後は酒を飲まず、風呂に入らず、静かにする事。でもあたしは毎日8時間はお話をしなくてはいけない。これはちと地獄。
ソウルそぞろ歩き
翌日は皆さん東京にかえってしまったが、私はもう一拍のこり、委君と韓国ソウル探索を楽しむ事になった。私にとってはい君との再会がもっとも思い出に残るソウルだった。
宿をでて、ぶらぶらと歩いて立派な二階建ての錦と葵色で塗りわけられた建物を見学。これPhotoshop CSの[ぼかし]フィルターで加工したのだが、こういう時はアルファチャンネルをもう少し細工しないといけない。カメラを構えているのが委君で、今日のソウル散策の出だしの写真。
その後、ソウルの骨董、書画、画廊などが集まる原宿のような場所を案内しもらい、いくつかの写真展を拝見する。4×5のネガを使って撮影された済州島の写真には感動があった。しかし多分アマチュアだと思われるが、Photoshop やペインターに作らされたという典型的な写真には閉口した。もちろん日本にもこの手の写真が氾濫した時代も確かにあったし、いまだにその傾向は払拭しきれていないのも確か。
お昼はもちろん古式のキムチをたんと乗せたご飯。出てくるのが水やお茶でなく(お茶はお金を払ってのむ)お米の香ばしい香りのするお湯なのも嬉しい。
その後市場を見学。その雑踏の凄さは最近込み合ったところを歩かない私にしてはとんでもないものだった。南大門(これって今は交差点のど真ん中にあるの。さすが元の交通の要だったところだね。)を過ぎて、銀座に当たる街角、で休憩。私はこのカフェで1時間くらい寝たみたいだ。
その後ケーブルカーに乗り、なんと加山に。ガスが激しくて町がかすんで見える。ソウルの空はこんな物だと委君は言う。もとKCIAが本拠地を置いていたところらしく、昔はげに恐れられていたところだとも。
大きなお寺にたどり着いた時は開館時間の5時をすでに過ぎており、仲は拝観できなかったのが残念。
委君の勤める会社のそばの焼き肉屋で(ここがとても居心地のよいお店だった)実にうまい焼き肉をいただき、幸せになる。
その後タクシーでホテルに帰り実に小さなセミナーを委君と二人でおこなった。もうカラーマネジメントは何か、という話ではなく、どうやってカラーマネージメントを納得させるか、というミニセミナーだった。
小腹がしてきたので夜のソウルへ。飛び込んだ焼き肉店でうまい冷めんを食わせる店はないかと聞くと、親切にも別の店を紹介してくれた。初めて食べる極細麺の冷めんだった。
これでソウルの二日目は終了。明日は5時起きで東京に帰る。
さて、来月から定期的にソウル電塾の開催。トップバッターは電塾の助教授、阿部さん。多分私もまた参加する事になるのだろう。そのつもりで、のこったウォンはそのまま両替せずに持ち帰ることにした。なんとも慌ただしい韓国旅行はこうやって終了した。新潟から数えて丸四日間。リュックが方に食い込むようだ。