命日


 朝9時上野発のスーパー日立11号に乗り、いわきへ向かう。父ちゃんの命日で、特に何回忌、というわけではないが、八戸に住んでいる母ちゃんが墓参りに行きたい、というのでそのお供をするため。このところ、“おかく”もいなくなり、新幹線も八戸まで通ってしまったし、あたしのうちも浅草橋で、上野、東京駅まで近くなったので、墓参りに行っていない。車で帰っていた頃は込んでいる東北道を避け、常磐道で八戸に向かった関係で、常磐道をおりるとそこは宮城県いわき市四倉。都合よくあたしの父ちゃんの墓がそこにあるのだ。それで8年くらいは墓参りを“久田”と“おかく”と共にかかした事が無かったのだ。
 しかし、帰省のために、車の中で丸1日、実家に帰り着いて一日眠り、翌日は家族と食事をするも、翌々日はまた丸一日車の中。渋滞がひどい時は28時間ものろのろ運転をした事もある。特に家の場合、運転手はあたし一人、という事もあったし、道が特に混む(この民族の大移動、世界でもっとも渋滞密度が高く、規模が大きいのではないだろうか)お盆しか帰れないという事情があり、ついに折れてしまった。それが、自宅→上野が0.3時間。上野→八戸2.8時間。八戸→実家が0.5時間。合計3.6時間でその間は寝ようが酒を飲もうが、飯を食おうがやりほうだい。(実はほとんどテキストを打っているのだ。とてもカメラマンとは思えない)こんなに楽な事はない。おまけにちょっと目には電車の方が高そうだが、実際に往復丸四日間の食費やおやつを考えるとほとんどとんとんだ。そしてその間、あたしの時間が全く使い物にならないのと、事故の危険にさらされる事、移動が往復でも約7時間で済んでしまう事を思うと倍以上か四五倍の価値がある。 たとえば、今までは深夜に出発したり、早朝に出発したりしていたのだが8時に起きて9時の新幹線に乗り、12時には八戸について、母ちゃんと昼飯。夜は田舎の友人とのみに行く。つまりこの日の昼から帰省が完了しているのだ。車の場合だと早朝4時に東京を出発。運が良いとお昼ころ墓参りをして、仙台が夕方。よく早朝に実家に帰り着き、その日は丸一に寝っぱなし。運が悪いと翌日の昼過ぎに付いた事もある。当然さらに翌日になって、初めて帰省が完了し、その翌日にはもう東京に向かうが、これで5日間を消費してしまった事になるのだ。
 そういった理由で唯一のデメリットは墓参りが不可能になってしまった事。ま、それでもこうして別口で行くのも、また良いんじゃないのかしら? それにしても便利になったものだ。この常磐線はその昔、あたしがまだ予備校生だった時代に、よく実家に帰るのに使用した。“久田”にとってももともとは葛飾とは言え、実家が松戸に移動して以来、常磐線はなじみの路線だったという。当時の常磐線周りの八戸行きは12時間はかかっていたと思う。(しかも硬いイス、おまけに乗客の柄は最低ランクだった。)今は直通は多分ないと思うが、車両はきれいだし、イスも座りやすい。今は傍若無人な宴会も影を潜めたらしい。
 父ちゃんの命日はゴールデンウィーク直前で、東北地方では桜が満開となり、おまけに春の花がまとめて咲き出すとても良い季節だ。こんな季節に仕事を離れ、一日を過ごさせてもらえるのは父ちゃんのプレゼントかもしれない。今日一日は気温が20度前後でのどかに晴れている。