Photoshop が6.0となり、その善し悪しはともかく、常に入力側と出力側の二つのプロファイルを参照し、「一時的なデフォルト」としての作業用に色空間をもち、「カラーマネージメント」をはじめて矛盾無く実行できるアプリケーションの登場した。そのころのタイミングとしてカラマネツールの普及があり、カメラマンと製版側との対話が始まり、ここにきて一気にカラーマネージメントは現実味を帯びてきた。しかし、デザイナーの方々にとっては世の中で叫ばれてはいるものの、実態のわからない「カラー マネージメント」であり、今まで幾度となく浮かんでは消えていった、どうやら「実行不可能なもの」であったらしい。さらにいえば、現状でなんとかなっているのになぜそんなややこしいことをしなくてはならんのだ、といわれたこともある。デザイナーさんの存在は、カメラマンにとって、色彩を正しく伝えていくための方法論を、叫べどお願いすれど、なかなか理解してもらえない頭痛の種でもあったのだ。(いやいや、全てのカメラマンがそれほどきちんとしている訳ではないし、全てのデザイナーさんが理解していなかった訳でもないのですが)
カラーマネージメントがシステムとして運用されるためには是非ともデザイナーさんたちの前向きな参加が必要だ、ということが私達の間で話題になって久しいが、その方法となると、全くの無策だった。
そんな時に関西で活躍しておられるデザイナーさんがLabを訪問された。上高地さんという方で彼の講演にMonaco OPTIX のデモンストレーションを含めたいということだった。そして、「ACEでするローコストカラーマッチング実践講座」というテキストをお持ちになった。
この本を一読して、待望の書がついに上梓された、と感じまた。カラーマネージメントの本質、そのシステムの基礎(といっても理解しやすい範囲で)からその用法について初めて具体的に書かれたものであり、特筆するべきは全て、理屈に走らずに、実行可能な形で解説されていることだ。また、読んでみると一見理解が難しそうなカラーマネージメントシステムの理論もわかりやすく、具体的な例を挙げて解説していますので理解することにも役立つにちがいない。
もちろんカメラマンとデザイナーという立場の違いによる理解、運用法において、カラー設定などに個人的には異論はあるものの、理想に縛られたり、現在は実現不可能な空論に言葉を費やすことなく、実際の運用において現実的な方法論を明快に展開している。私自身、拝読していて、あ、そういう解決法があったのか、と目からうろこが落ちる思いをすることも多々あった。
本書はデザイナーさんにとっては、カラーマネージメントの理想と現実のギャップを埋めてくれる初めての本となるのではないだろうか。また私達カメラマンにとってもこの方法論が定着することで安心してAdobeRGBというカラースペースでデータをお渡しすることが出来るようになるのだ。そういった意味においても歓迎すべき本の登場といえる。
著者も後書きに書いていますが、あえて、「カラーマネージメントシステム」ではなく、「カラーマチング」という表現を使っている。現実にはカラーマネージメントは、いまだ発展途上であり、理想的なところまで行けないけれども実用範囲としてここまで出来るんだ、という表現でとらえています。今後さらに発展していく技術(理想に現実がどんどん追いついていく)のうち、今、使える部分を有効に、しかもAdobeという共通フォーマットを使用することにより、汎用的な方法論を展開していることに大いに共感を覚えました。
何はともあれ、全ての基本は測定器によるモニタキャリブレーション。この本にはそう書いてあった。