中部電塾

ほとんど一年ぶりの中部電塾に参加させてもらった。懐かしい顔もあるし、新しい顔も散見する。早川塾長、永嶋氏の後を受けての一日Photoshop 教室ということで呼ばれたのだが、このお二人の後で今更私に何ができるだろう、との思いが強い。何しろ、先人が先人だ。おまけに何を聞きたいのか、どこに興味があるのかわからないのだ。(一年のブランクは恐ろしい)そこで一計を案じた。電塾にならって無理やり自己主張、自己紹介の時間を多くとるように仕向けた。まず運営委員に自己紹介をお願いする。(彼らの自己紹介は結構自己主張になり、長引くのは知っている)途中で私が割り込み、私という人間を知っていただくためにこってりと自己紹介をする。当然、参加者の方々も思っていなかったことまでくちにする。それは、私にとっては情報の宝庫だ。何が問題なのか、どういいった事で電塾に参加したのか、今何を一番の問題にしているのか、そのあたりが手に取るように理解出来るからだ。結果として、長年電塾に参加してくださっている方々よりも、今デジタルを始めた方々を対象にお話をしたほうが良かろうという結論に落ち付いた。
 私は結果的にはこれで良かったと思っている。食いたりなく感じられた方々も多くいたと思う。中部電塾の運営委員のほとんどはいい加減にこんなことを卒業しているのだもの。でも新規の参加者に対していきなりとんでもないことをいっても始まらない。中部電塾の中にも、温度差、進み方の差は存在するのだもの。私自身、今更のように基本を確認するようなつもりでお話を開始した。これといったテクニックもない。トーンカーブの奥義に迫るようなお話もなし。ひたすら、[環境設定]のそれぞれの意味と色相・彩度のダイアログの使用法、シャープネスの扱い方に終始した。私達はテクニックを学ぶ前に、どうありたいか、どのような映像を眼前に展開したいか、という基本的な問題に立ち返るべきではないだろうか?

話を始めてから、1時間もたったころに、そういう思いはさらに加速した。今まで私を含めて、どんなけ基本を無視してきたのだろう。もちろんそのさまざまなシーン毎に対応の仕方の違いはあったのだろうが。すでにPhotoshop を使いこなしていると感じている方がにも改めて確認する事は必要なのではないだろうか?
カラーマネージメントが目指すもの。プロファイルができること。インプットプロファイルとアウトプットプロファイルと、汎用プロファイルが指示すものの違い。カメラマンとデザイナーの立場の違いによるカラー設定の食い違い(実は運用法においては同じもの)。そのあたりに重点を置いて解説したつもりだ。今回思わず、シャープネスの取り扱い方について、新しい発見をした(というか解説の仕方についてだけれども)。ターゲットをRGBにするか、CMYKにするかでおおきくその方法論、意味が違うことだ。十分に伝わったかどうか、自信はないが、初めてこの件について言及したような気がするし、おおきな収穫はであったと思う。佐々木氏から的確な質問があり、それにお答えすることで、何とか真意を伝えることが出来たような気がする。

長年、こんな事をやっていると、私クラスの人間でも、常に新しい発見を前面に出し、どうだ驚いたろう、とやらねばならない気がしてくる。でもそれは違うのだ。今日の中部電塾はそんな気持ちにさせてくれた電塾だった。自分自身、基礎を確認し、カメラマン(写真家?)は何をして我が表現とするべきか、改めて考えさせられた良い機会だったと思う。
事細かに書きつなれる事はできないが、お話をしているうちに、アクロバティックな画像処理よりも、表現したいもの対する心構え、とくに色彩論に還っていく自分を見つけた一日だった。その意味でも今回私を呼んでくれた、中部電塾の運営委員に対して感謝しなくてはなるまい。

私達はデジタル化されたおかげで、写真の中の構図や感性だけでなく、色彩感覚をもこの手に取り戻すことがで来たのだもの。これを暁光と言わずして、なんと表現するべきだろう。

5時以降の打ち上げに続き新幹線駅近くの宴会は深夜まで続き、危うく新幹線に乗り損なうところだった。(今新幹線の中でこれを書いているので、まあ、間に合った訳だが)気持ちの高ぶりを一人で押さえつつ、良い日だったな、と回想している。