新年の2日3日と久しぶりに仕事を持ち帰らないお正月を過ごした。ニョウボ殿の実家で飲んで食って寝てまた飲んで寝て食う。確か昨年はiBookを持ち込んで年賀状書きと校正をやっていたような気がする。その、ちょうど一年ほど前にどたばたしていた事件。
いつものことだが安請け合い
たしか2001年の2月か3月、まだ早い春のころだったと思う。早川、阿部の両氏に紹介されグラフィク社の大田さんとお会いして、プリンタ使いこなし術の本を書いてみないか、と言う打診があった。以前にも雑誌、ムックなどにテキストを提供したことが何度かあり、(そのおかげで元々文章など書くような人間ではなかったものが、ついその気になってしまったのだろう。そう言えば事の始まりはこの露悪趣味丸出しのこの日記シリーズだったかもしれない)その10~15倍くらいの文章量。普通は情報集めから始まってだいたい1週間くらいで書きあげていたので、20週間、つまり半年もあれば書き上げることができるな、と安請け合いしてしまった。その後いくつかの経緯がありウィンドウズも含めた各メーカーのプリンタを一気に使いこなすという構想はあまりに広大すぎ、相性問題まで発展することは確実で、手に負えないだろうという事になり、一時おあづけの形になった。少々ほっとしていると、Photoshop Elements という新しいソフトが発売になり、この解説を書く、というアイディアが浮かび上がり、前回のプリンタ使いこなしに変わり、Photoshop Elements の解説本を書くことになった。
本を書くなんて、実際はとんでもない仕事
たかが、とまでは思っていなかったが、半年で何とかなると相変わらず楽観していた。当時はセカンドカメラの桜井が、“お客様とお付き合いしながら、お客様を満足させる撮影(仕事)とはどういうものか?”ということに目覚め始めたところだったので、これ幸いにほとんどの撮影を任せ、ポイントだけ私も参加するというスタイルを取る事ができ、彼が当社のスタジオにいてくれる間に(桜井は当時すでに本来のスタジオにあと半年で復帰することが決まっていた。)一気に書き上げようというもくろみではあったのだ。
しかし、一冊の本を起承転結を付けて、ある決まり(知らなかったが、最初に総ページ数とかが決まってしまうのだ)の元に書き上げるということがどんなに大変なことか、ということを初めて味わうことになる。しかもこの本はウィンドウズ対応で書かれるという事で、作業がやりにくいったらありはしない。こういった仕事は矢張りマックが向いているとつくづく思わされた。けしてウィンドウズ機が嫌いというわけではないが、それぞれ得意科目はもっているようで…だからこそ共存している意味があるのだが…無理にこれで画像処理をしなくてもいいのに、と思う。
いやいや、こんなことは些細なことで、各章を通しての表現の統一やら、方法論の準備やら素材の選定、まさしくほんの価値を決定する内容の詰め。これらをしているうちに時間は情け容赦なく過ぎていく。おまけにあたしは思いきり読みやすくしようと(内容として)見開き2ページに項目をまとめて書き出したが、そうすると内容の多いページと少ないページが発生し、それは編集上は“読みにくい”あるいは“みっともない”ページになるのだそうで、その辺りも書き直し、全体の分量も多いということでこれも書き直し。
そうこうしているうちに月日はどんどん、どんどん過ぎてゆく。2001年中に書き上げるはずの約束が、翌年の正月に突入してしまった。その間、8ヶ月ほど睡眠時間は削り尽くすところまで削り、無駄を省き、ニョウボ殿と時間配分でぶつかりながら、写真学校、関西電塾、中部電塾等をこなしていく。(何処で仕事をしてるんだ??)
災難は忘れたころにやって来る
2002年1月始め、つまりちょうど1年前の今日あたり、松の内にほとんどの章を完成させるが、更にページ割りに変更が入ってしまった。というのはかなり削ったり余裕を持たせたつもりだったのだが、ページ当たりの文章、写真の量がそれでも多く、再レイアウトに時間がかかるということだ。そうそうしているうちに組み版を担当して下さっていた方の体調が思わしくなく、別の方にバトンタッチするという大変なことになってしまった。あたしの原稿がそんなにひどかったのかしら? ちょっと気になる。
これで組み版をすっかりやり直すことになり、実際に校正作業に入りだしたのは3月に入ってから。この間、スタジオと自宅は3回の引っ越しを続けていし、新潟電塾は始まるし、であたしはてんてこ舞いしていたわけだ。校正作業は思いの外たいへんで、ミスを見つけては画像を差し替えたり、文章を訂正したりと、もうすっかり忘れてしまった部分を何とか思い出しながら作業する。第1校のころは校正を手伝ってくれた“久田”もネコ問題やら引っ越しやらで忙しく、手伝ってもらえるような状況ではない。何事も自分でちゃんとやらねば、ということだったのだが、結果的に刷り上がりを見て、いきなり前書から校正ミスを発見することになる。
更に思わぬもめ事まで発生し、(表紙をどうするかって事だけど)最後は何をやっているのかわからない状況になり、あっぷあっぷして、ふと気がつくと本は完成していた。何事も最後はあっけないモノだ。
こんなおまけが
1年がかりで書き上げた本だったのだが、ついに出版!となったとき、アメリカでPhotoshop Elements v2が堂々発表になった。ま、バンドル版を対象に書いていたし、おまけにPhotoshop Elements 特有の機能に関してはベイシックな部分に出来るだけしぼって書いたので、さほどのことはないが、やはりショック。このバージョンアップは(しかもメジャーバージョンアップだぜ)いつものスケジュールに比べて1年以上早いジャンか!というわけで出版記念パーティも、サイン会もなく、(当然だ!)静かに初出版。 ま、こんなもんでしょう。長い間いろんな人に励ましてもらい、最後にはおめでとうを言っていただけました。早川塾長、阿部助教授、モッチーさん、永嶋さん、…スタジオバクに帰った桜井君、最後のどたばたをサポートしてくれた石川君、づっと私を癒してくれた“おかく”。みんなみんなありがとう。