三回忌


 三年ぶりにあるクライアントさんが撮影を依頼してくださった。今回も立ち会いで、新商品のプレオープン用の撮影。三年前というとまだ私達が練馬に住んでいた頃。思い出して仕事を回してくださる、という事は私達にとってとても幸せな事だ。仕事が始まってしばらくして、あの猫ちゃんはまだ元気なんですか?と聞かれた。彼女は“おかく”の事を覚えていてくれたのだ。印象的な猫だったので…と。
 こちらに越してからいくらも立たないうちに死んじゃったんですよ。
 そのことをお話しすると、残念がってくれた。彼女も今年、まだ年の若い猫を失ったばかりだという。しばらく仕事そっちのけで、向日葵の日記の話題に興じてしまった。
そう。2年前の8月3日朝早く、“おかく”は私達の元から去った。特に何をするわけではないが、今日は“おかく”の三回忌だった。
 向日葵の日記を5月に書き終えてから三ヶ月経った。ほとんどの思い出を書き終えてしまったと思っていたらこんな日に“おかく”のことを覚えていてくれる方にまた合う事が出来た。どこまでも一筋縄では行かない猫だね。
 臆病猫の“ぺこ”がいるので、いまのところ新しい猫を飼う気が起きない。というよりも練馬の内にいた頃と違って猫との出会いが少ないのだ。家はいつも入り猫。私達が選んで猫を飼うのではなく、猫達があたし達のところを“選択”してやってくるのだ。
 また誰かに“選択”してもらう時がきっと来ると思う。それまでは“ぺこ”と“久田”との三人の暮らしが続く。思い出をほとんど書き記したにしても、あたしは今でもその思い出の中でふわふわ遊ぶ事が出来るし。
 そろそろ向日葵の日記の中の誤変換を直そうとお思うのだが、それもそのまま。